株式会社メンバーズポップインサイトカンパニー 久川氏|フルリモートマネジメントの秘訣は採用とコミュニケーションの手法
―株式会社メンバーズポップインサイトカンパニー
カンパニー社長 久川竜馬氏・採用担当 鬼頭敦子氏ー
プロフィール
株式会社メンバーズポップインサイトカンパニー カンパニー社長
久川竜馬(ひさかわ りょうま)さん
2018年、同社取締役に就任。
2020年4月、同社代表取締役に就任
趣味: 食べ歩き
株式会社メンバーズポップインサイト カンパニー
採用担当
鬼頭 敦子(きとう あつこ)さん
会社概要
【ミッション】
「ユーザ視点を間近にすることで人と価値をつなぎ、心豊かな社会をつくる」
【行動方針】
ミッション実現に向けた活気ある組織を作るべく、「自立」と「尊重」という2つの言葉に集約される行動方針を大事にしています。
【サービス概要】
・UXリサーチの内製化支援:UXリサーチャーとUXリサーチツールをクライアント社内チームに配置
・UXリサーチ(アンケート、ユーザーインタビュー、ユーザビリティテストなど)のご提供
など
【株式会社メンバーズポップインサイトカンパニーHP】
リモート下で活躍できる人材とは
―本日はよろしくおねがいします。まず1つ目の質問ですが、御社では、リモート下で活躍できる人はどのような人だと考えていらっしゃいますか?
久川:主に二つの要素があると思います。まずはアウトプット・成果を出している人です。もう一つは、相互の現状や状態などの情報共有ができる人ですね。
それが出来ていないと、「あの人どうしているんだろう」「何をしているんだろう」「うまくいっているのかな?」とマネージャーは不安になります。メンバー自身もマネージャーに相談しにくい空気になってしまいます。だからこそ、“Slackベースで関係を築くために、どのような相互のやり取りをするか”については、今でも腐心していますね。
―そうですよね。そのようなお互い見えない状況で、どのように自分を表現できる場を設けていらっしゃるんですか?
鬼頭:自分の状況を表現・共有するという観点では、Slack内には一人一つ自分専用のチャンネルがあります。私の場合#times_kitoのチャンネルがあります。そこで「今からこれをやります」「今これをやっているけど、この作業でつまずいていて…」などと、随時こまめに呟きます。自分の状況を共有することで他のメンバーが見に来て「これで解決できる」と教えてくれる展開も結構あります。
例えば「自分から発信する」「気づいて察して、という期待を持たない」などローコンテクストなコミュニケーションですね。オフィスの場合、隣にいて困っている人を雰囲気で察せますが、それがリモートではできません。
つまり 察してほしいと思うだけでは気づいてもらえないこともあり、周りの人も困ってしまいます。とにかく自分から発信することが必要です。だから弊社では、timesチャンネルを活用している人がかなり多いです。仕事・プライベート問わず呟けるので、かなり賑わっているチャンネルもあるんですよ。このように気軽に発信・表現できる環境は整っていますね。
マネジメントの観点に関してメンバーの立場からいえば、評価ポイントが成果だけでなくプロセスも含まれます。「今ここで詰まっていて」と発信すると、それに対してのアドバイスも誰かが発信し、助け合える。自分の成果が成果物だけではないと思えます。
―他の人のプロセスを閲覧できることで、それぞれどう乗り越えているかも知ることができますね。
鬼頭:それが他の人にも参考になり、メンバーの知識にもなるので良い施策だと思っています。この取り組み自体は、元々他社で実施されていた事例を知っていたものを自社で広めていきました。リモートワーク未経験の方は、最初は皆の表現量が多すぎて「ついていけない」「作業に集中しているとついつい、つぶやくのを忘れちゃう」となります。ただ慣れもありますし、「可能な限りやる方がいいことがあるよ」と促すようにはしていますね。
Slackでのチャンネル制度について
―この施策はいつから始めたのですか?
鬼頭:約2年前です。元々、ツールはチャットワークでした。チャットワークの場合、ルームメンバーしか内容を確認できません。自分が入っていない他の部屋で、何が話されているのか知る術がありませんでした。
―移行して変わりましたか?
久川:大きく変わりました。元々チャットワークには個人チャンネル等の個室はなく、チームごとのチャンネル・社内プロジェクトのチームがありました。これに加え、雑談専用チャンネルは作っていましたが、基本的にそういった場は“誰かに向けて話しかける”という前提がないと発言・発信できない心理的なハードルがありました。そこで、1on1などの別のコミュニケーション・相互の表現方法を考えました。しかし、「チーム内で何を言ってもいいよ」としても、自分の日々の状況を共有することは難しいことでした。チーム内で「○○さん、これどうですか?」などと誰かに向けて聞く時のみ発言する形でした。
しかしslackでtimesを作ってからは、誰かに伝えたいかは関係なく、皆が自分の独り言を発信できています。「これに困った」「○○まだ終わっていない・・・後でやろう」など、自分の状況を自分のために呟けることで、お互いの状況もすり合わせられています。
このような“必ずしも相手を前提としないからこそ言える発言”がコミュニケーションにも繋がり、移行前後でかなり大きな違いが生まれました。
―自分が悩んでいることは、他の人に聞けばすぐに解決することも多いですもんね。
久川:「こんなつまんないことを聞くなんて・・・」「こんなことで相手の時間をとるのも申し訳ない」と思ってしまい、そのコミュニケーションをとらない選択をする好ましくない循環があるみたいなんですよね。
―そういう意味では、活用することで成長速度が速くなりそうですね。
久川:そうですね。やはり弊社はチームワークを大事にしているので、マネージャーや違うチームの人にもコメント・反応しやすいことも大きいと思います。つぶやきのチャンネル「times」は僕自身も使っています。あまり頻度が多い方ではないですが、「こう考えている」「これが上手くいかない」などはつぶやくようにしています。社員からも「これやってほしい!」等のレスポンスがつき、それで施策になることもありますね。
鬼頭:slackだと、スタンプでも反応できるのも大きいと思います。コメントを残さなくても、「そうですね!」「なんだ!?なんだ!?」などスタンプで反応できるので心理的ハードルが低いと思います。
久川:わざわざ回答として、反応を文章にすると思うと、面倒だからやめてしまいがちですからね。
鬼頭:スタンプの種類も沢山あります。カスタムスタンプで作成できるので、使いきれないくらいスタンプが沢山あります。スタンプだけで会話が出来ると思います(笑)
リモートで働く上で必要な力とは
―次に、リモートで働くために必要だと思う力を教えてください。
久川:僕自身が感じていることは、大きく二つあります。弊社では自立・尊重・貢献の3つの行動指針を大切にしています。特に“自立”が一番大きいと思います。その意味には、自分を表現することも含まれています。例えばリモートにおいても、自分の状況が相手に見えないため、極論を言えば好きにさぼれます。そこで自分に責任を持ち、周りを巻き込んで相談しながら進められるかですね。さらに自宅は周りの誘惑も多く、テレビや音楽・漫画などで遊ぼうと思えば可能です。そのような状況で、自分で自分の仕事を進めていくために、最低限自立できるかは大きなポイントだと思います。ポップインサイトは元々少数制だったので、“一人ひとりが頑張れるか”をポイントに採用していたこともあり、上手くいっています。
もう一つは、ある程度簡潔に要領よく話せるかどうか・文章でも表現できるかどうかです。この理由は、リモートワークでは文章でのコミュニケーションがベースだからです。
報連相・相手に何かを話すとき等、前提を伝えたうえで分かりやすく話す必要があります。新しく弊社に入社し、上手くいかない方には、そういったところのフィードバックから入ることが多いですね。
採用の基準と見極め方
ー採用担当目線として、鬼頭さんはどう思われますか?
鬼頭:採用面談では特に、行動指針の自立・尊重がお互いにマッチしているかを重視します。元々、スキルより“カルチャーにフィットするか”をより重視する採用方針でした。それがリモートにもマッチしたのだと思います。ですので、特にリモート下になったことでの方針転換はしていません。ただリモート下の採用・面談で、より確実性を高いマッチング度にしていくために、選考の中でアンケートを実施しています。
候補者の方に、かなりボリュームのある“仕事に対する価値観のアンケート”を二種類頼みます。Googleフォームで二時間程かかるアンケートです。さらにその次の面談で、画面共有でアンケートの回答を見ながら「ここにこう書かれていますが、その時の状況はどうでしたか?」「この考えをより具体的に教えてください」と、かなり詳細にすり合わせをします。もちろんこちらからも見させていただいているのですが、候補者の方に「本当にこの考えの会社で働いていいか。自分はそこで働きたいか。」のマッチ度をかなり慎重に見ていただきます。
そのため、自立と尊重を今のところカバーできているのだと思います。「もし違和感をお互いに感じるようであれば、入ってからもカルチャー面で苦労すると思うので、そういう結果にはならないように」とお伝えしたうえで、アンケートにも参加して頂いています。
―アンケートはどのタイミングでお願いされるんですか?
鬼頭:経営陣との面談の前に、人事担当者がこういった選考プロセスを実施しています。リモートワークということで応募される方も多いのですが、選考プロセスのなかで価値観が合わないことがわかる方も、もちろんいらっしゃいます。
書類選考の後の人事面談1回目で今のアンケートをお願いします。人事面談2回目はそのすり合わせです。そこでカルチャーがマッチしていれば、次は現場担当者との面談に入ります。
最後の最後には、インターンのような形でリサーチ業務を一通りなぞってもらう工程もあります。選考期間がかなり長く、選考に1か月半~2か月かかる人もいます。
久川:リモートワークなので応募はかなり来るのですが、実際は価値観が合わなかったりする方も多いですね。
―アンケートは何問くらいあるんですか?
久川:ひとつは仕事に関する価値観を問うアンケートで、10段階評価とその理由の記述をする設問が10問。もうひとつは「過去」「現在」についてのご経験や「未来」についてのお考えを記述するアンケートが10問、といった感じです。
鬼頭:面倒だとか、その趣旨に賛同いただけない方は、その時点で選考を辞退されたりします。“自分の考えを文章で表現する”というところも見させて頂きたいので、仕方がないです。例えば「ミスマッチを防ぐ目的で今のお気持ちをお聞きしているという前提のもと、「会社で働く際に何を重視していますか」「どのようなコミュニケーションの取り方が心地よいですか」「社会貢献についてどうお考えですか」など細かくお聞きしています。
辞退される方もいらっしゃる一方で、ちゃんとマッチした会社かを吟味したい方などには好評です。「こんなに丁寧に見て下さってありがたいとおっしゃる方もいます。もちろん、文だけでは分からないこともありますが、その真意を知りたいので、口頭でのすり合わせまできちんと行います。大きなずれは、これでわりとあきらかになるかと思います。
今後求める人物像
―今後はどのような人材を採用していきたいですか?
久川:今までと大きく変わらないです。僕らはリモートワークなので、場所は問わず、一生懸命に働きたい方に積極的にご応募いただきたいです。やはり「リモートワークでないと働けない」という方もおられます。病気をお持ちだったり、家庭の事情等で会社に出社することは難しい事情がありながらも働く意欲をお持ちの方などですね。また、家庭や家族以外にも自分の居場所が欲しい方、社会貢献したい方などもご応募いただき、一緒に働くことでその方々にご協力できれば嬉しいです。
今後の事業展開について
―最後に、今後の事業展開について教えてください。
久川:UX(=ユーザ体験)業界がどうなっていくのかは誰にも想像できません。「UX」への認知や「UXリサーチ」への理解は進み始めたばかりです。
リモートワークとはいえ、大量生産・単純作業を企業のためにする簡単な派遣・パートタイムのようなマイクロソーシングのようなビジネスではなく、クリエイティブなことをしっかりやりたいです。
たとえば、ユーザーの声を活かしながら、ビジネス・サービスを作っていく仕事ですね。実際にクリエイティビティと意欲を発揮し、お客さんへのビジネスでの価値貢献をやっていきたいと思っています。リモートワークの概念は、コロナ禍で変わりましたが、以前は小さい外注・単純作業をやるための手段だと思われがちでした。
そうではなく、一人のパートナー・社員として、クリエイティビティを発揮して生産性高く、自分のやりたいことを実現できる仕事もしていけると思っています。事業を作りながら、細かいところは業態に合わせて考えていきます。
弊社は”ユーザ視点を間近にする”会社です。今は調査を依頼されてから解決案を出すまでに3週間くらいかかっており、これは業界でみると早いほうですが、1週間・3日など、今後よりスピード感を増していきたいです。そうすれば、より多くのユーザーの声を収集し、改修を重ね、実際のビジネスのフィードバックに活かせると考えています。
株式会社メンバーズ ポップインサイトカンパニー HPはこちら
リモートビズでは、完全リモートのエンド直案件のみをご紹介いたします。
これまで、案件を紹介したエンジニアは常駐で勤務していた方が「収入が上がった」や「好きな時間で働ける」など数々の実績をあげております。また、今回ご紹介した企業様もご紹介することが可能です。
リモートワークの求人やお仕事の相談なら、是非リモートビズまでご連絡ください。
投稿者|柳 恭平
リモートビズ運営責任者。約3年間のフリーランスの経験をしてリモートビズに参画。
営業,企画,マーケ,広報,エンジニア対応とマルチに対応。最近ではPythonを使った業務効率化する方法を習得中。